魔物を殺す

 先週の土曜日、久しぶりに行ったサークルでD&D3rd*1をプレイした。
 プレイヤーには私と同じ外部からきているメンバーでも、まだ来るようになって日の浅いドイツから来ている男女一人づつと、古参のメンバーであるT氏で、ゲームを監督するDM*2はプレイスタイルが奇抜なM氏だ。
 実のところM氏がDM初体験なのかも知れ無いことは知っていたし、T氏以外の二人と席を同じくするのは初めてなのであるが、私はいつものプレイスタイルを突き通すことにした。
 実際、プレイしてみてそうまずいとも思わなかったのだが。
 今回のストーリーはプレイヤーの扮する冒険者4人が、滞在している村の依頼で近くの森にある洞窟に蔓延るゴブリンを退治してきてくれ、と依頼され「ひと稼ぎする」ために出かけていく、というなものだ。
 経験の差というものか、まず依頼を受けるか否かの時点で「その依頼は誰がした物か」「ゴブリンは誰が目撃したのか」など背景を疑ったりする三人の用心深さには学ぶ物があった。まあ、同調して情報を探り出した物の、初心者の私がいるので正直そこまで厳しいストーリーを考えているとは思えなかったのだが。
 言語の違いは相手がつたなくとも日本語を話せるので電子辞書片手にDMが頑張った*3ので、後はどう責めるかである。
 無論、私はメンバーと親しかろうがそうでなかろうが死体を収集したり利用したりすることを忘れないのであるが。
 T氏は後の二人が日本人に誤解を抱かない様にと気遣ってか「彼はクレイジーなんです」とか「彼はそういうプレイヤーなんです」とか言っていた様だが、死体の様にかさばる物を放置するよりはバリケードなどに利用してやったほうが言いと思う。というのが個人的意見だ。
「ゴブリンを退治しろといわれてきたのだから証拠品として倒したゴブリンの耳を片方削いで持って帰る」
 というのはそんなにクレイジーなのだろうか。羅生門にでてくる老婆や浪人の様に死体から武具を剥ぎ取るのは良くて、死体を損壊するのはいけないというのはどうにも理解できないのだが……。
 まあ、依頼の方は完璧にこなし、最後に一匹だけ残ったゴブリンを旅人から強奪している宝の場所を確認する為に捕虜にするという提案に乗り、メンバーの中で唯一ゴブリン語を話せる私が「降伏すれば命は助けてやる」とだまくらかして降伏させた。
 ここで、一悶着あった。
 私が、
「宝の場所まで案内させたらこいつも始末してしまおう。」
 というと、私以外の三人が揃って目を剥いて驚いたのだ。
 降伏した相手を殺すのは惨すぎる、というのが皆の意見であったが、そもそも冒険者達が受けた依頼は「ゴブリンを全て退治する」ことであるから、契約を守るのならゴブリンを殺してしまうというのは間違って無いと思うのだが、彼らはジュネーブ条約に義理立てでもしているのだろうか。それともゴブリンにだって人権はある、とでも思っているのだろうか。少なくとも「退治してくれ」などという依頼をほいほい受けた人間の言葉とは思えない(まあ、約半数が人間じゃないが)。
 結局殺すのはやめて宝を強奪した後はゴブリンを村まで連行することになった。彼らによると「村で裁判を受けさせる」そうだが、彼がそんな待遇を受けることは無いであろうなぁ、と私は心の中でゴブリンを哀れんだ。少なくとも「一人格を持った隣人」として認識されていない存在がまともな裁判や処遇を与えられるとは思えない。いっそあの場で殺された方が苦しまずに済んで幸せであっただろうに。
 閑話休題
 村までの帰路、なぜか私のキャラがゴブリンを護送することになった。擁護するという立場になったのならその責任を持って彼をせっつく役目は皆にしてほしいというのが正直な気持ちであったが……。まあ、そんなプレイの仕方もありなんだろうと苦笑いしながら戦利品を山分けしたのであった。

 今回の冒険で、正直戦闘の面では役に立てないキャラであるというのがプレイ中に判明した。
 一撃も攻撃を当てれずに終わることもしばしば……というかそっちの方が多かったり。いりいろ死後に死体をないがしろにされたゴブリンの呪いであろうか。

*1:有名なRPGダンジョンズアンドドラゴンズの第3版

*2:ダンジョンマスターといえばお分かりいただけるかな?

*3:というかあれだけ話せれば十分過ぎるかもしれない